仏教学習日記『法華経講読』(37)


法華経講読(第37回)

                                   
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於² 此世界¹.  尽見²彼土六趣衆生
                                          
此(こ)の世界に於(おい)て、尽(ことごと)く彼(か)の土(ど)の
六趣(ろくしゅ)の衆生(しゅじょう)を見(み)、

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仏様が眉間白毫相より放った光で下は地獄から上は最高位の天まで
見ることができました.それらは、地獄、餓鬼、畜生、修羅、
人間界、天、の6つで、この6つの世界を六趣と言っております.

その6つの世界での人々の暮らしぶりを、今、垣間見たのであり
ます.ただこれらは実際の空間に存在するのではなく、私たちの
心の中にある世界のことを言っているはずです.仏様の光は、
私たちの心の中の6つの状態を見て取ったという理解でいいと
思います.

 

さて、1番目の世界:地獄

これらのうち、一番恐ろしい世界は『地獄』でありますが、
これは何を意味するかと言いますと、間違いなく『瞋恚(しんに)』、
つまり「怒り」です.怒りが一切を壊してしまいます.

 

2番目の世界:餓鬼界 

その上の『餓鬼(がき)界』も光で照らされました.同じく人の
心の状態を言っています.この心とは、「貪欲」の状態のことです.
人間の欲望というものは際限がありません.ブッダは人の欲望
は金貨の雨を降らしてもまだ満たされないと言っていました.
 何?1回でいいからこんな雨が降ってほしい? だから、1回
味わえば、また降ってほしいと思うものなのですよ.


 3番目の世界:畜生界

 この世界は『愚痴』の世界といわれています.私はこの「愚痴」
を既存の解釈では見ません.もちろんぶつぶつ不平を言うという
のが正しい日本語ですが、ここではそう解釈せずに、そのまま
「愚かなる心」と読みます.では、何が「愚か」なのであるか?
それは、道理をわきまえていない心のことです.道理とは何か?

それは、原因と結果.物事には「原因があるから結果がある」
いつでもそうなのですが、そのことが分からない.悪いことを
しておいて、見つからなければその報いは来ないだろうと思う.
これが浅はかなのです.行ないの結果はすぐにはやって来ません.
ブッダに言わせると、その業(カルマ)は、しぼり立ての牛乳の
ように、すぐに固まることはない.徐々に固まって、悩ましな
がら愚者につきまとう、と言っています. 

 

 4番目の世界:修羅界

ここは争いの世界と言われていますが、争いの世界なら、すでに
先ほど見た地獄界です.この修羅世界は、私は普通の解釈はいた
しません.ここは「うそつき」の世界だと宣言します.仏教書
には「諂曲(てんごく)」(へつらい)の世界と解されていますが、
「へつらい」がそもそも「うそ」をつく行為であります.

 

 5番目:人間界

ここは「反省」の世界といわれています.しっかり反省してね!

 

 6番目:天上界

ここも常住の浄土ではなく、無常が支配する世界で、いつかは
終わりが来ます.はかない天国です.つまり、私たちの世界は
いいこと半分、悪いこと半分でできていて、ここでのいいこと
を味わったあとは、その反動で、居心地の悪い世界が待ってい
るというわけです.常住のいいところというのは、この六諏の
世界から出なくては、どうにもなりません.

さて総括しますと、「六趣」というのは「心の趣きの6種類」と
いうことで、心をいつもこの6つの世界から解脱させておくのが
ベストなのあります.