仏教学習日記『法華経講読』(28)


法華経講読(第28回)

                                   
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韋提希子阿闍世王.各与² 若干百千眷属¹倶.


韋提希(いだいけ)の子(こ)阿闍世王(あじゃせおう)、
若干(そこばく)の百千の眷属(けんぞく)と倶(とも)なりき.

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韋提希の子阿闍世王』というのは  アジャータシャトルのこと.
マガダ国、ビンビサーラ王の息子.悪友デーバダッタにそそのか
され父、ビンビサーラを殺して王位を手に入れる.まるでオペラ
のストーリーのようだが実話です.ビンビサーラ王は、ブッダ
修行中のときに高殿から見つけて、俗世に留まるよう、いろいろ
好条件を示した人物です.今で言えば、アメリカ大統領が「ペンタ
ゴンをあなたに、そっくり差し上げます.国防費も好きに使って
下さい.あなたには副大統領の地位も差し上げます.これで出家
を思い留まって下さい.
 もちろんブッダの答えは「ノーサンキュー.バイバイー」.

 このビンビサーラ王もすごい観察力のある人で、見ただけで
この修行者がただものではない、と感じ取りました.偉人の相
というものがあるのですね.仏像を作るときにも、形式化した
32の偉人相というものに基づいて作ります.それらは:

①足安平相:足の裏がべた足.
②千輻輪(せんぷくりん)相:足の裏に千輻輪の掌紋がある.
③手指繊長(せんちょう)相:手の指がすんなり細長い
④手足柔軟(しゅそくにゅうなん)相:手足の肌触りがやわらかい.
⑤手足指縵網(しゅそくまんもう)相:手足とも指と指の間に
      まるで水鳥のように、みすかき状の膜がある.
⑥足跟満足(そくこんまんぞく)相:足のかかとが広くて円満.
⑦足趺高好(そくふこうこう)相:足の甲が高く盛り上がっている.
⑧伊泥延腨相(いでいえんしつそう):ふくらはぎが鹿王のように
    円く微妙な形をしていること。伊泥延は鹿の一種。
        腨如鹿王(せんにょろくおう)相と説く本もあります:
    ももの肉膝が鹿王のようにしなやか;
    別の解釈本もあって、「膝が柔らかい」.
        まあ「足が羚羊のようにしなやか」と解釈しておきましょ
    う.
⑨手過膝相:正立手摩膝相(しょうりゅうしゅましっそう)とする
    本も多い.立ったときに両手が膝まで届く長さ.床に着く
    と書かれた本もあります.こんなの、化け物ですが…. 
⑩馬陰蔵相(めおんぞうそう):馬のように陰相が隠されている.
    (男根が体内に密蔵される).
        これが体内にあるとのこと、一体、お小水はどうしている
    のでしょうか?  きっと、後世お弟子さんたちが仏の荘厳
    のため作りあげた相でしょうね.だって尿が排出されない
    と困ります.
⑪身縦広相:両手を広げたのと、身長が同じながさである.
    しかし、❾の説明では手が床まで届く、ということですか
    ら、手は、腰のあたりから生えていることになります.
    昔、火星人の絵を見たことがあります.タコのような宇宙
    人のようです.
⑫毛穴生青色相:一本一本の毛孔から青色の毛が生えている.    
       自然界には青色の体毛をもつ動物はいません.セサミスト
    リートのクッキーモンスターぐらいしか思い浮かびません.
  https://sp.walkerplus.com/charawalker/topics/topics_1062273/
⑬身毛上向(しんもうじょうこう)相、身毛上靡(じょうみ)相とも
    訳されています.体毛がすべて上向きである.植物の雄蕊
    ならわかりますが体毛が上向きなんて、驚いたときのマン
    ガの図でしか、みたことがありません.そこでもっともら
    しい解釈は体毛がすべて右巻きだ、というもの.これなら
    螺髪の説明もつきます.ただし、実際のブッダは剃髪して
    いたので、一切毛髪はありません.これはあくまでも、仏
    像デザインの話です.
⑭身金色相:全身がまるで黄金のように輝いている.
    やっとまともな説明が出てきました.インドならそして
    アーリア人系なら灼熱の太陽の下、身は金色に輝くとい
    う説明はじゅうぶん納得できます.
⑮常光一丈相:辺りに一丈(約3m)の光をいつも放っている.
    これは実際に見る光ではなく、感じ取るオーラのことで
    しょう.世の中にはオーラが見える、という人もいるそ
    うです.
⑯皮膚細滑(ひふさいかつ)相:皮膚がなめらかで、少しのアカも
    つかない.
⑰七処平満(しちしょびょうまん)相:両手、両足、両肩、首筋が
    の肉が盛り上がって豊である.
⑱両腋満相:(りょうえきまんそう)わきの下にも肉がついていて、
    普通の人間のようにはへこんでいない.
⑲身如獅子(しんにょしし)相:シシの如く威厳がある身体つきで
    ある.
⑳身端直(しんたんじき)相:身体がしゃんとして端正である.
㉑肩円満(けんえんまん)相:両肩が豊である.
㉒四十歯(しじゅうし)相:40本もの歯が美しく並んでいる.
        歯の数は健康な成人で、親知らずを入れて32本です.
    40本あるというのは、歯を全体的に小さくするか、顎
    を逆に大きく作るか、いずれにせよ奇形になります.
        歯の数が正式に40本ある動物は馬です.まさかブッダ
    馬のように長い顔だったとは考えたくないのですが…
        結論としては:32本の歯のうち、永久歯8本が虫歯
    などのために抜けたが、8本がまた生えたため充填歯
    を入れる必要はなかった.
㉓歯白斉密(しはくさいみつ)相:その歯はみな真っ白で美しく並
    んでおり、大きさが同じで隙間がない.
㉔四牙白淨(しげびゃくじょう)相:上下4本の歯は特に美しく
    白い.(40本の他に4本あるとする本もあります)
㉕頬如獅子(きょうにょしし)相:両頬がふくらんで、ひきしまって
    いる.
㉖咽中津液得上味(いんちゅうしんえきとくじょうみ)相:口の
    中に特別の唾液があって、何を食べても最上の味がする.
㉗広長舌相:(こうちょうぜっそう) 舌は薄く柔かで、出せば、
    顔を覆い、髪の生え際までとどく.両耳をなめたと書かれ
    ています.実際にそういう光景をみたら、卒倒してしまう
    でしょう.おもちゃで、吹くと巻いた紙が30 cm ほど
    前に飛び出る笛が、縁日の店で売っていますよね.ああ
    いう舌なのでしょうか.
㉘梵音深遠相:(ぼんのんじんのんそう)大きな声でしかも美しい.
㉙眼色如紺青相:(げんじきにょこんじょうそう)  ひとみが青い.
        アーリア人はヨーロッパ系人種なので目の色は青だった
    のでしょう.
㉚眼睫如牛王相:(げんしょうにょごおうそう) 牛王のように、
    まつ毛が長く美しい.
㉛眉間白毫相:(みけんびゃくごうそう) 両眉の間に白い毛が右巻
    きで生えていて、光を放っている.
㉜頂成肉髻相:(ちょうじょうにくけいそう) 頭のてっぺんの肉が
    隆起して、ちょうど髻(もとどり)を結ったような形をして
    いる. 

以上です.怪獣みたいですね.


 32相に気を取られて、大切なことを言い忘れていました.
この段、暗に言わんと示していることがありまして、つまり、
たとえ親を殺害した非道の輩でも、深く反省して、仏の教えを
よすがに立ち直ることができるのだ、ということを韋提希夫人
の子、阿闍世王の名によって示唆されているのでした.

 ブッダ在世の当時も、アングリマーラという殺人鬼が
ブッダの教説を受けて、出家し、非常な苦難の末に
ついに覚りを得た、という話がありました.

 殺人を繰り返し、そのたびに、殺した人の指を切り取って、
紐につないで、首飾りにしていたという恐怖の犯罪者でした.
出家してから杖木瓦礫の仕打ちを受けるのですが、ブッダ
「これはお前がしてきた罪障が罪になって戻ってきたものだ
から、しっかし耐えなさいよ.」
と諭され、励まされまして、覚りを達成したという話でした.

この仏説の開教に際して、主たる聴聞者のうち、特筆すべき
人物として、ここに触れられていたのでした.