仏教日記(6)
ベナレス、及びベナレス近郊のサールナートでの一連の教化を終えた
その途中、ブッダは道から少しそれた場所に広がる密林に入り、ある樹木
の下に座り、瞑想をしていた.
たまたま30人の男女のカップルがそこに遊びに来ていました.
彼らは、みんな夫婦関係や恋人関係でしたが、1人の男だけは
独身だったため、相手がおらず、代わりに遊女を連れていたの
でした.
さて、その遊女は、ちょっとクセのある悪いやつで、男のサイフと
金品(当時だから時計はなかったはず.しかし瓔珞などはあっただろう)
を奪って、この森に逃げ込んだというのです.
そういうわけで、29人総出で森の中を探し回っていました.
そしてブッダが瞑想してる樹木のところに、彼らは差し掛かりました.
若者たち:ちょっとおじさん、遊女がここに逃げ込んでこなかった?
ブッダ :知らない.
若者たち:探してるんだよ.
ブッダ :君たち、女を探すのと、自分を探すのでとでは、どちらが
大切かね.
ここで若者たちは、はっと我に返って、自分を内省することにしたとある
のですが、それは古代インドの話.
現代日本に置きかえるとこうなります.
若者たち:おっさん、何を眠たいこと言うてんねん.「自分を探せ」やてか?
おれは、ここにいてるやないか.あほかおっさん.
ブッダ :お前らな、その自分ゆうんは、身体のことやろ.
わしがゆうてんのは、自分自身のことや.
あのな、身体はこの世の仮ものやん.お米や魚を食べて
それが、あんたらの肉体に変形してくっついてるだけやん.
若者たち:ほんで何が言いたいねん.
ブッダ :まあ、ええから聞けや. お前らかて、魚やお米をこの世
の神様から盗んで身体にくっつけてるだけやん.
その女な、悪いゆうても、お前らのしてることと、あんまり
変われへんで.
若者たち:ほな、何か、おっさん、その女が盗んだものは、もうあきらめろ
てか?
ブッダ :せや.ええか、人生は短いで.女の盗んだものも、お前らの身体も
死んだら終わりやん.けどな、自分自身を見つけたら、死んでも
持っていけるねん.こっちのほうがええやろ?
若者たち:なんや、キツネにつままれたみたいやけど、まあ理屈はわかる.
ブッダ :つまりやな、自分自身を見つけたら、過去世の自分も見つかるし
死んでも自分は死なないのや.という確信ももてる.どや?
ええ話やろ.
若者たち:うーん、まあ、そういうこっちゃな.
おい、みんな、このおっさんの話を聴こうやないか.
全員 :よし、何かのめぐりあわせや.聞こう.
おっさん、話して聞かせてくれ.
ブッダ :よっしゃ.話したるわ.その前に、わしを「おっさん」
呼ばわりせんとけ.わしは、 瞿曇悉達多(くどん・しっだった)
いいまんねん.ゴータマさんゆうてくれたらええわ.
パーリ語で「ゴータマ・シッダッタ」ちゅー名前でっさかい.
そうして不死の境地を感得して、若者たちは出家したと言います.
こうしてヤサとその友人を教化して61名になっていた教団はまた29
名を得たことになります.